部分入れ歯(ハイジェニック デンチャー)
※ハイジェニックデンチャー = お口の中の自浄作用を阻害しない入れ歯
歯が部分的になくなったら、噛む力は歯と粘膜(歯ぐき)によって支持されます。
部分入れ歯は、1歯の欠損から1歯の残存までさまざまな歯の欠損状態に適用されます。外れないようにするための維持はクラスプによって歯に求めます。
その構成要素は、
(1)人工歯 (2)クラスプ (3)義歯床 (4)連結装置
で、それぞれに形態や材質の種類は多く、さまざまな歯の欠損状態に合わせて、構成要素を適切に組み合せて義歯(入れ歯)をデザインします。
このことから、義歯治療は患者様一人ひとりによって異なるテーラーメイドと言えます。
当専門外来の部分入れ歯の特徴は、歯周病の原因であるプラークの付着しにくい ハイジェ ニックなデザインになっている事で、スカンジナビアのスウェーデンで考えられものです。
その概念は、歯の喪失原因がプラーク付着による歯周病原菌の感染にあるとのエビデンスに基づいたものです。
そこでプラークが付着しにくく、また、咀嚼時に生ずる入れ歯の動きを最小限とし辺縁歯肉への機械的刺激が防止できるという長所を有するデザインが考えられたのです。
近年、糖尿病と歯周病との因果関係が強く推測されていますが、その様な観点からも、このハイジェニックデンチャーは大きな長所をもつものです。
口の中もエコロジー
義歯を入れることによって唾液の流れが変ったり阻害されたり、生態系と同様に口腔の衛生環境にも変化が生じます。
私達「スウェーデン入れ歯・インプラントセンター」が推奨するハイジェニックデンチャーでは、とくにこの唾液による自浄性を損なわないことに注意を払った、つまりプラークコントロールのしやすいデザインで、プラークの付着しにくい金属で製作された口腔衛生を最重視した部分入れ歯です。
スウェーデンで習得して帰国後、約30年にわたり大学病院で実践してきて、その予後は大変良好で、患者様にも喜ばれています。
デザインの重要性
歯を喪失する原因調査において、「不良な、不適合な修復物」が「虫歯」や「歯周病」よりもはるかに大きな原因である事がスウェーデンで明らかにされ、報告されたのです。
このことから、修復処置がなされた歯やその周辺の歯肉を傷める事のないデザインが最重要視される様になり、唾液の自浄性を損なわない、またプラークコントロールが容易なデザインの入れ歯が考えられたのです。
歯の喪失の原因 (画像をクリックすると拡大します) | 入れ歯のバネにそって齲蝕が発生している例 |
ハイジェニックデンチャーのデザインの特徴と症例
ハイジェニックデンチャーは、「軟組織へのダメージを少なくするにはどうすれば良いか」に重点をおいて、スウェーデンで発想され、大変ユニークな入れ歯のデザインが考案されました。
口腔軟組織へのダメージの原因は主として炎症によるのですが、辺縁歯肉の炎症を引き起こす要因には、大きく次の二つが挙げられます。
1. デンタルプラークの付着
2. 咀嚼時に入れ歯が動揺する
部分入れ歯の構成要素と名称 | レストが設置されるレストシート |
これを防ぐために、
・ プラークに対しては、入れ歯の構成要素を残っている歯からできるだけ離す。
・ 入れ歯の動揺に対しては、「レスト」による支持をより確実に設置する とともに、
大連結子を十分強固にする。
等によって、唾液の流れを阻害しない(自浄作用を妨げない)でプラークの付着を抑制し、また、食事をしても入れ歯の動きは最小限に抑え、機械的刺激から保護する事ができ、結果として辺縁歯肉の炎症を防止できると考えられたのです。
スウェーデンで考案されたオリジナルのハイジェニックデザインを持ち帰ってきた1980年頃は、日本の歯科医院で一般的に治療されていた部分入れ歯のデザインとは大きく異なっていました。
当時、日本の部分入れ歯のデザインの考え方は、「入れ歯の構成要素を歯に緊密に接する」方が維持力が強く、プラークの堆積を防ぐ事ができるというものでした。
しかし、ハイジェニックデザインに合理性があると考え、以後、大学病院でこのハイジェニックデンチャーのセオリーを採用し、ケース毎に日本人向きに若干の修正をして治療してきましたが、いずれも予後は極めて良好でした。
「 Owall B(スウェーデン)によるオリジナルなハイジェニックデンチャーの一例 」
歯に近い部分には入れ歯の構成要素はない。
これによりプラークは付着しにくく、唾液の流れは阻害されず、自浄性が高まる。